GPS(米国)、GLONASS(ロシア)、QZSS(準天頂衛星、日本)、Galileo(EU)などのGNSS衛星システムが普及する中、GPS機構では衛星測位の高度化を図ることを目的に、従来のGPS基準局から、複数の衛星システム(マルチGNSS対応)によるGNSS基準局に移行を進めている。
GNSS基準局システムのメリットは以下のとおり。
- リアルタイムキネマティック測位(RTK-GNSS)により、港湾工事において最も高精度で安定性に優れた測位を可能にする(測位精度についてはRTK-GPSとRTK-GNSSは同等)。
- 利用可能な衛星数の増加により、障害物周辺での測位信頼度が向上し、また海域によってGPS衛星配置の悪い時間帯等に発生する不安定要因が改善され、工事の稼働率が向上する。
- 利用可能な衛星数の増加により、補正情報の利用エリアが拡大する(GPS基準局では半径20km程度、GNSS基準局では半径30km程度)
- 耐用年数を過ぎた機器の機能増更新とともに、港湾工事におけるICT施工の基本となるRTK測位システムの機能向上が図られる。
北九州港におけるGNSS測位実証試験(平成27年度、GPS+GLONASS)、神戸港におけるGNSS測位実証試験(令和2年度、GPS+QZSS+GLONASS)等により、GNSS基準局システムの安定性と、長基線(海上50㎞程度まで)でのRTK測位(FIX解)の実用性を確認した。
これら検討を踏まえ、GNSS基準局の使用衛星の組合せはGPS+QZSS+GLONASSを採用した(補正データ標準フォーマットはGNSS対応のRTCM3.2)。
(1)基準局での対応(GPS機構)
GPS機構において、基準局のGNSS対応を進める。
・基準局機器(GS50、GS60)にGNSS対応ソフトのインストール
・GNSS受信機のファームウエア5.45へのバージョンアップ等
(2)移動局での対応(利用者)
①補正データ受信機(GS3000番台)の配備、GNSS対応ソフトのインストール
②GNSS受信機の配備、オプションの設定、ファームウエアのバージョンアップ等
③GNSSアンテナの配備
④施工管理システム(パソコン)のシステム変更は不要(一部の例外を除く)
【参考】補正データ受信機へのGNSS対応ソフトのインストール
・GNSS基準局はGNSS補正情報(RTCM3.2)を送信、GPS基準局はGPS補正情報(RTCM2.1)を送信する。このためGNSS基準局に切替え(GPS基準局の廃止)後には、GPS対応の移動局は使用できなくなる。
・補正データ受信機GS3000番台にGNSS対応ソフト(GPS機構提供)をインストールし、GNSS対応の受信機・アンテナを配備することで、GNSS対応移動局となる。
GNSS対応移動局は、補正データ受信機のスイッチ切り換えで、GNSS基準局(RTCM3.2)とGPS基準局(RTCM2.1)のどちらも使用が可能。
【参考】補正データ標準フォーマット(RTCM)のバージョンについて
・RTK測位のためには、基準局と移動局で、補正データ標準フォーマットRTCMのメジャーバージョンを合わせることが必要。GNSS基準局はRTCM3.2、GNSS移動局はRTCM3.2(またはRTCM3.0)が必要となる。
- ※GNSS受信機によっては、RTCM3.0でもGNSSに対応できなかった事例が報告されていますので、対応については事前にメーカー等にご確認ください。(詳細はGPS機構まで、令和5年4月)
【参考】GNSS受信機ファームウェアのバージョンアップについて
・GNSS受信機のファームウェアは、RTCM3.2に対応するようにバージョンアップする必要がある。基準局のGNSS受信機はファームウェア5.45(ニコントリンブル)を使用、移動局のGNSS受信機も同程度の水準のものを推奨(ファームウェアはメーカーにより規格が異なり確認が必要)。
・利用者説明会:令和3年3月11日、6月2日
・GNSS基準局移行に関する利用者アンケート:令和3年3月~4月
・GNSS基準局システムへの円滑な移行のため、GNSS移行助成制度(民間対象)、GNSS対応ソフトの提供、機器等の特別価格設定、技術支援、経過措置等を検討:令和3年6月
GNSS基準局への移行スケジュール→